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日本語の歌詞について -母音- ぶんつむの「雑談」ネタ

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『文章を紡ぐための文章トレーニング』(略称、ぶんつむ)のテスト回。『雑談』お題「日本語の歌詞」についての資料です。

前提として、この『雑談』では小説の話をしない。直接的にはね。だから、『雑談』と銘打っている。

そして、もうひとつ。多角的な視点を持つことは大切だ。絶対、その方がいい。偏りなく、フラットな位置に自分を備えておける。それをあえて、不自由にしてやる。そうすることで、これまで見えなかったモノが浮かび上がってくるんじゃないか。そんな試みをやってみよう。それが『雑談』の狙いだ。

 

物事を一点突破の狭い視点で観察する。

 

これを頭に入れて、次の文章をお読みください。

 

日本語の歌詞について -母音-

日本語には母音は5つしかない。

「a」「i」「u」「e」「o」

他の言語、例えば、英語(アメリカ英語「Jones式発音記号」」)では、母音は細かく分類すると26個だ。このあたりは諸説あるので、詳しくは触れない。まあ、日本語より多い。そういう認識でいい。

歌ものの曲で、特にロングトーンでは最後に伸ばす音が母音になる。ロングトーンはボーカリストが魅せる箇所だ。日本語の母音が少ないのは、こと、音楽のジャンルに関して言えば、致命的に不利である。

 

例、荒井由実ひこうき雲

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サビを引用する。

空に憧れて
空をかけてゆく
あの子の命はひこうき雲
    引用:荒井由実ひこうき雲

ロングトーンと母音を強調して書き直すと、こうなる。

空に(i)
あこがれて(e)
空を(o)
かけてゆく(u)
あの子の(o)
命は(a)
ひこうき雲(o)

同じ母音が続いていない。ユーミンが意識していたのかどうかは分からない。分からないが「空に」の次に「空を」としたのは同じ母音の語尾になるのを避けていた気がする。

5つの母音しかない言語は単調に陥りやすくなる。これはもう、どうすることもできない日本語の宿命だ。だからこそ、過去、海外の楽曲を日本語で歌うことの是非が問題にされていた歴史がある。

だが、逆に、単調を利用することも可能だ。

 

例、フジファブリック「茜色の夕日」

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ギターソロが終わった、最後のサビ前のブリッジを引用する。

僕じゃきっと出来ないな 出来ないな
本音を言うことも出来ないな 出来ないな
無責任でいいな ラララ
そんなことを思ってしまった
しまった しまった

     引用:フジファブリック「茜色の夕日」

同じようにロングトーンと母音に注目して抜き出してみる。

僕じゃきっと出来ないな(a) 出来ないな(a)
本音を言うことも出来ないな(a) 出来ないな(a)
無責任でいいな(a) ラララ(a)
そんなことを思ってしまった(a)
しまった(a) しまった(a)

同じ母音(a)が続いている。途中のハミングもラララ(a)だ。ここを別の母音に変えると、かなり印象が異なってくる。最後の最後まで(a)を連ねることで大サビ前の静けさをうまく表現している好例だ。

 

例外、無声の母音とも言われる「n」

母音寄りの子音が「ん」だ。

日本語のロックが……の先駆けとされるのが、はっぴいえんどの1stアルバム『はっぴいえんど』。通称『ゆでめん』だ。全11曲収録されている。作詞は1曲を除いて、すべて、松本隆さんが書いている。

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で、このアルバムの全収録曲で、歌詞の語尾に「ん」が一度も出て来ない。これ、ものすごく不自然な話だ。語尾に「ん」がつく文章なんて、日常会話なら平気でつかっている。

わたしは、はっぴいえんどを知りません。

そう、「です・ます」調で「ます」の否定形が「ません」になっちゃう。実際、これを歌にすれば実感すると思うけど、ものすごく歌いにくい。なぜなら「ん」が伸ばせない音だからだ。

ついでの例。

荒井由実「卒業写真」。

タイトルにもある通り、語尾に「ん」が付く。

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悲しいことがあると 開く革の表紙
卒業写真のあの人は やさしい目をしてる
     引用:荒井由実「卒業写真」

卒業写真(n)で終わらずに、卒業写真の(o)で伸ばしている。

余談。

この曲の出だし。

悲(kana)しい こと(koto)があると
開く(hira)く 革の(kawa)の表紙

と3つ目以外は同じ母音が続く単語で始まっている。

 

英語の「n」はズルい。

前置詞の「in」「on」、現在分詞の「ing」あたりがその例。
さらに「n」の後に子音を付けられる。

これが英語の歌詞が日本語よりバリエーション豊かにできる優位性かな、と。

例はいくらでも挙げられるので適当に思いついたものを。特に、リズム感を強調するような曲調で……英語はズルイ。

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はい、こんなところで。

続きは各々が好きな曲を例に出して、歌詞の母音を意識して聴いてみてください。分かりやすく日本語の歌詞としましたが、これは俳句、短歌、現代詩にも応用が利くはずです。今まで見えなかった日本語の側面が窺えるんじゃないかと。

 

 

以上。