月と夜の散歩 - Television『Marquee Moon』

散歩する機会が増えた。

夜の散歩か、早朝の散歩。夜が多いかな。夜の散歩は午前0時ごろに近くの寺で鐘がなり、集合住宅の建物や東の山とかに反響して、どこから聞こえてるんだろう……って錯覚してしまう感覚がたまらなく心地よい。

ここ、京都市内では、星々が綺麗には見えてくれない。季節の星座すらも危うい。今の季節なら深夜のオリオン座ぐらいかもね。唯一、月だけが分かりやすい形で空に浮かんでいる。

思春期にレイ・ブラッドベリ(Ray Bradbury)などのSFから影響されたので行ってみたいのは火星だ。「火星年代記」に憧れていた。「ロケットの夏 (Rocket Summer)」の冒頭部は何度、読んでも、自分の中に潜む少年の夢みたいな一部をくすぐられてしまう。

ひとときはオハイオ州の冬だった。

<『火星年代記』より レイ・ブラッドベリ小笠原豊樹翻訳>

古き善きロケットのイメージは嫌いじゃないよ。ただ、見ているだけなら月も好きだな。いや、月の方が好きなんだろう。少し前まで輸入物のポスターを持っていた。夜光塗料が塗ってあって、部屋の灯りを消すと、2次元の月がぼうっと浮かぶように光を放つ。

テレビジョン(Television)の『マーキー・ムーン(Marquee Moon)』。1977年の作品。デビュー盤だ。どの曲が……というよりもアルバム全体として気に入っている。特に1曲目から4曲目にいたる音場がとても心地よくて、毎日のように聴いていた時期があった。

1.See No Evil
2.Venus
3.Friction
4.Marquee Moon

2本の金属的なギターの絡みだとか、トム・ヴァーレインTom Verlaine)のへなへなした声だとか。すべてが気持ちいい。他のアルバムでは味わえない高揚した脳内物質を愉しめる。もちろんCDとして手元にあって、たまに今でも聴いている。夜がよく似合うんだよね。

Tom Verlaineの声質と似ていると思うのはカーズ(The Cars)のリック・オケイセック(Ric Ocasek)。なぜかは分からない。一回、そう思ってしまってから、聴くたびにRic Ocasekの顔が出てくる。あまり気持ちのいいものではないけど。

音は正直だ。

The Carsにひとつ苦い思い出があるからかもしれない。大学生の頃、アマチュア・バンドのコンテストみたいなものがあって、そこで、あるアーティストのカバーをやった。一応、審査員らしき何人かが採点する。今、考えると、すごく優しいコンテストだった。1バンドごとに簡単な評価を書いてもらえる仕組みになっていた。

審査員のひとりが書いていたのは「イギリスで生まれたThe Carsみたいバンドだね」だった。たぶん、そのアーティストはアメリカなんだけど、知らないあいだにフロントマンになっていた自分の英国好きがバレバレだったんだと思う。

TelevisionもThe Carsアメリカのバンドだけど、イギリス系の匂いがする。Ric OcasekがウィーザーWeezer)のプロデュースしたのも理解できる。脳天気なアメリカらしさなんて皆無だもんね。明るい曲が、明るい曲にならないのが共通点。

翌年もそのコンテストはあった。別のアーティストのコピーだった。毎年、メインの審査員が各パートごとに最優秀を評価の紙に書いてくれるのだけど、なぜか、ボーカルの最優秀になっていた。間違っている。ヘタクソだよ。しかし、よく、分からないコンテストだった。

月。

朝の散歩は近くの鴨川まで。陽の光をあびた生まれたての空気を身体に浴びると、それだけで小さな力が沸々とわいてくる。水面もきらきらと光っているしね。それ、見ているだけでも心が落ち着く。できれば東の山から太陽がのぼりはじめたぐらいの時間がベストだな。うまくいけば南の高いところに左半分だけみえる下弦の月が青い空に見える。

昨日は満月。ということは今夜は十六夜なのか。ちょっと、夜の散歩にでも行ってこようかな。

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Marquee Moon

Marquee Moon

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Television『Marquee Moon』といえば、ナンバーガールのSEとして定番化してる。再結成は驚いたよね。

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ナンバーガールの楽曲で一番Televisionっぽいなと感じるのは「URBAN GUITAR SAYONARA」かな。特にイントロあたりが。

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