VoosteQの「Material Comp」は真っ当リアルな昆布である(レビューではなく激推し)

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VoosteQの「Material Comp」が最高!というお話。

VoosteQは国産のデベロッパーだ。(現時点で)唯一リリースしているプラグインはコンプレッサーのみ。その名前が「Material Comp」なのであーる。以前から欲しいな……と思っていた。そうしたら、ゆにばすさんが「Computer Music Japan Store」をオープンして、「Material Comp」の取り扱いを始めた。

 

このツイートを見た10分後にはポチっていた。

すぐにインストールした。普段使いのDAWFL studioMac)だ。で、FL studio上に「Material Comp」を立ち上げた。いろいろとつまみなどをいじくる。30分ぐらいシンプルなリズムパターンにエフェクトをかけ続けた。

で、ファーストインプレッションは

なに、これ? 最高やん!

だった。

その日以来、コンプはFL studio純正が1割で、残りの9割は「Material Comp」を使うようになった。そう、「Material Comp」はMacBook air にインストールされている他のコンプすべてを抹殺した。完膚までなきに抹消した。

ここに「Material Comp」の詳しい使い方とか、コンプレッサーとは?とか、そんなことを書くつもりはさらさらない。おおまかな内容は、ゆにばすさんのブログ「SynthSonic」の記事を読めばいい。それほど長くないし、要所はおさえてあるし、とても分かりやすい。

世にあるコンプレッサーのプラグインは、誤解を恐れずに言い切ってしまうと、2種類に分けられる。1つ1つのチャンネルにかけるバスコンプ、それに最終最後で全体にかけるマスターコンプだ。たいていは、そこに実機(ハード)をエミュレートしたアナログ臭が加わったりする。

「Material Comp」はさまざまなパターンに使用できる万能コンプだ。元の音を壊さない程度のアナログ感がたまらなく心地よい。コンプとしてはあっさり系に入るのかな、と思う。何よりも豊富なプリアンプやフレーバーが用意されていて、その味付けが美味しすぎるのである。なので、「Material Comp」は通常のコンプとしての役割だけでなく、プリアンプやコンソールといったアナログ感を付け足す用途に充分以上の働きをしてくれる。

いや、これはもう使い倒すしかないっしょ。

なので、こんなつぶやきをした。

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そう、「Material Comp」はコンプというより、コンブ……昆布だ。マテリアルじゃなくて、真っ当リアルな昆布だ(だじゃれ)。

「Material Comp」出汁で煮込んでやると、具材(音)に芳醇な味と香りが色付けされる。もしかしたら、ほんの些細な違いなのかもしれない。他の人が目隠しして味見(聞き比べ)しても気付かない程度なんだろう。でも、はっきりと元の素材(音)よりもジューシーさが増していて、使っている側の食欲を満たしてくれる。

ひさびさにソフトウエア、しかも、エフェクト、しかも、コンプレッサーという地味な役割のプラグインに感動してしまった。いやはや、参りました。完全カンペキに降参の白旗をあげたくなったよ。

 

そして、話が逸れていく。

昆布は凄い食材である。「Material Comp」ではなく、海藻のコンブの話だ。ここからはコンプとコンブでは読み間違いしやすいので、漢字表記の昆布に統一する。

1907年、化学者である池田菊苗は人間には「うま味」という味覚が存在していると提唱した。その後、池田菊苗は昆布の出汁から「うま味」成分の正体であるグルタミン酸ナトリウムを抽出することに成功する。

ちなみに味覚は5種類存在している。甘味、酸味、塩味、苦味、そして新しく発見されたうま味だ。辛味は味覚ではない。科捜研の女マリコさんがそう言っていた。辛味は痛みなどで感じる刺激に属している。

この発見によって、1985年、池田は「十大発明家」に選ばれた。池田以外は、養殖真珠の御木本幸吉(真珠シェア世界1位のミキモトの創業者)や、ビタミンB1を発見した鈴木梅太郎(実質的に世界で初めてビタミンを抽出&発見)、八木・宇田アンテナを発明した八木秀次(アンテナってこんな形だよねと皆さんが想像する形を発明)などの名前が挙がっている。

1909年、その「うま味」は商品名「味の素」として発売された。そして、世界中に広がった。企業名や商品名を言えないテレビなどでは、「味の素」ではなく「うま味調味料」と表記されている。でも、テトラポットやマジック(マジックインキ)と同じように、消波ブロックやフェルトペンよりずっと世間にその名前が定着していった。

うま味調味料を英語では「Umami Sesoning」と言うらしい。日本うま味調味料協会のQ&Aにそう書いてある。いい加減な企業サイトではない。gr.jpのドメインだもの。

www.umamikyo.gr.jp

他には、「MSG」と表記する場合もあるようだ。「MSG」はグルタミン酸ナトリウムを意味する「Monosodium Glutamate」の略で、決して、Michael Schenker Groupの略ではない。でも、特に東南アジアではそのままの「ajinomoto」で通用すると思う(自分調べ)。

ちなみに、昆布の英語表記は「seaweed」が最も一般的らしい。他には「kelp」なんて呼び方もあるらしい。らしいを連発したが、英語が母国語でないのではっきりとした断言はできない。さらには、なんと、日本語そのままの「kombu」でも通じるようだ。

ウソだろ?

と思ったが、しっかりと英語圏の辞書に記載されている。それも、19世紀から続けられている由緒正しきウェブスター辞典に載っている。ウソじゃない。メリアム=ウェブスター大学辞典の最新版で検索すると、ほら、この通り。

www.merriam-webster.com

発音まで聞ける。「コーンブー」。ここまで来ると、ぼくらが知っている昆布とは別ものみたいに思えてくる。

つまり、昆布はワールドワイド的に俯瞰しても、日本から発進された素晴らしき食材のひとつなのである。

 

話を戻そう。

 

昆布ではコンプのお話だ。

シンセやドラムマシンといった電子音楽の分野において、日本の企業が世界の音楽シーンに及ぼした影響は計り知れないものがある。そこに貢献したのが、いわゆる日本3大シンセメーカーと呼ばれるヤマハYAMAHA)とコルグKORG)、それにローランド(Roland)だった。

例を挙げる。あくまでも、数多くある例の、ほんの一部だ。

ヤマハDX7はデジタルシンセが一般ユーザー(アマチュア)に浸透するきっかけをつくった。コルグのM1はシーケンサーを搭載したワークステーション(単純に言えばシンセ1台で曲がつくれちゃう)が当たり前になる先駆けとなった。いわゆるエポックメイキングというやつだ。M1が発売された当時はヒットチャートの曲に「M1ピアノ」が多用された。ローランドのリズムマシンTR-808TR-909は未だにダンスミュージックでバリバリの現役だ。TB-303ベースなくしてアシッドテクノは生まれなかったし、シンセJuno-106はテクノやハウス界でめちゃくちゃ使われた。

たった1つのシンセやリズムマシンが、世界中で生み出されている音楽にパラダイムシフトをもたらす。まったく、ものすごいことだ。そんなものすごい製品には開発者の想像を超えたパッションとかエネルギーが含有されているのは過去の歴史が証明してくれている。

VoosteQでは新しい製品をリリースする準備があるようだ。

 

こちらのインタビューでもリリース予定の新製品について触れられている。

computermusic.jp

音楽の制作環境はハードからソフトへと移行した。もちろん、プロが利用する録音スタジオなどでは今でもハード(実機)は健在である。ただ、ソフトの開発には目覚ましいものがあって、実機よりはるかに格安の価格でハードに近い音を作りこめるようになった。幅広い層のコンシューマーにとって、とても良い時代になった。

近い将来、起こりうるであろう音楽シーンの変革は、おそらく、ソフトウエアから発信されるのではないかと予想している。あくまでもぼんやりとした予想だけれど、同じような考えを持っている人は少なくないはずだ。実際、DTMerでハードを持っていない人の割合が増えている。大半の作業がPC内で、ほぼ完結してしまえる時代になったのだ。

通称ビッグ・テックと呼ばれるアメリカの超IT企業郡「GAFAM」も最初は小さなベンチャーだった。モノがハードからソフトへ移行した現在であれば、きっと、変革を起こす垣根は以前よりずっと低くなったのではないだろうか。今はちっちゃいデベロッパーであっても、将来、その分野の先頭を走っているかもしれない。日本にある小さなデベロッパーがパラダイムシフトのトリガーに成り得る可能性は決してゼロではない。

「Material Comp」を触っていると、そんな淡い期待にも似た未来を浮かべてしまった。

というわけで、

まだ、「Material Comp」を持っていない方はぜひ、一度、体験していただきたい。VoosteQ公式から14日間無制限のデモ版をダウンロードできる。また、たまに、いわゆる「あたおか」な企画をやったりするので、VoosteQのTwitterをフォローしておくと、幸運が降りかかってくるかもしれない。

 

VoosteQ公式サイトはこちら。

www.voosteq.com

ゆにばすさんの「Computer Music Japan Store」でも購入できます。

cmjstore.com

とにかく、

VoosteQの「Material Comp」は真っ当リアルな昆布である(褒め言葉)

なのよ。

以上!

www.youtube.com

※参考
本の万華鏡 第17回 日本のだし文化とうま味の発見

www.ndl.go.jp

 

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要は「Material Comp」って、コンプ+プリアンプ+サチュレーター+アナログコンソールのエミュレーターという感じ。実際、純粋なコンプではなくアナログ風味の付け足しとして使っている人が多いんじゃないかな……。

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味の素といえば、これだよね。アジパンダ。日本の、いや、世界中のパンダファンはこれを必ず最低ひとつは持っている。これ、日本の、いや、世界の常識!

www.ajinomoto.co.jp

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昆布出汁といえば湯豆腐の季節が近づいてきた。ちなみにわたしの主食は豆腐。ほぼ毎日、豆腐を1丁食している。よく食べているのは、京とうふ藤野の絹ごし、男前豆腐の信吾港町、しっかりかための豆腐屋信吾あたりかな。

www.kyotofu.co.jp

otokomae.jp

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ヘッダ画像はVoosteQ公式サイトにあるのを使用した。怒られないかな?と若干不安。もしも、「こらっ!」って叱られたら、後で変更します。新製品リリースされたら絶対に買うんで、それで許してください。はい……。

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しっかし、いったい、わたしは何が書きたかったのだろ……とここまでの文字を打って、ふと我に返る……。ま、いいっか。

mixiと「Young Adult Friction」そしてSlowdive

ぴくみんと出会ったのはmixiだった。ピクミンではない。あれは任天堂のゲーム。こちらはひらがなだ。ぴくみんは○○県に住む10代の、たぶん高校生、そして女の子だった。たしか、2009年あたりだったんじゃないだろうか。どうやって知り合ったのか、詳しい経緯は覚えていない。

そんなぴくみんが、今年1月にリリースされたSwervedriver(スワーヴドライヴァー)の新譜『Future Ruins』、その国内盤におさめらているライナーノーツを担当した。すごい!もうひたすらスゴイ!としか言いようがない。それに引き続き、本日発売したRingo Deathstarr(リンゴ・デススター)のリマスター盤『Sparkler』のライナーノーツまで書いている。

Swervedriver(スワーヴドライヴァー)

イギリス・オックスフォード出身のバンド、Swervedriverが結成されたのは1989年。My Bloody Valentineなどが所属していたクリエイション・レコーズから1stアルバム『Raise』をリリースした。1998年に解散。2008年に再結成。2015年には17年ぶりのアルバム『I Wasn't Born To Lose You』を。そして、2019年に新譜『Future Ruins』を発表した。アルバムタイトルを直訳すれば、未来の廃虚。かっこいい。

www.youtube.com

動画はアルバムのオープニングナンバー「Mary Winter」。

mixi

mixiを始めたのは2006年だった。ものすごく昔だな。インターネットの世界では……というより、リアルにずいぶん昔の話だ。当時、mixiは招待制で、アメーバブログでつながりがあった人に招待してもらった。仕事場の同僚に誘われたはいたのだけれど、ネットは匿名感が強くて、やんわりと断っていた。

新しいおもちゃはとことん遊ぶ性格なので、いろいろな人とマイミクになった。初めて自分のお金で買ったアルバムの歌姫とか、大学のときにコピーしていたバンドのドラマーさんとか、元教え子(中高受験の進学塾で数学と理科を教えていたので)とか、東京で写真を撮っている人とか。

mixiつながりでバンドも組んだ。そういえば、こちらのアカウントでお世話になっている健さんのバンドを京都に呼ぶって企画はmixiメッセンジャーでやりとりをしていた。ここには書けないような話が回ってきたこともあった。いや、ホントかウソかも判別不能な、ぜったいに書けない話が多かった。

インターネットは「不思議だが本当だ」、そんなつながりだ。世界にはさまざまな人が住んでいるんだな……という得体の知れない実感があった。

Ringo Deathstarr(リンゴ・デススター

アメリカのバンド、Ringo Deathstarrが結成されたのは2005年。いわゆるゼロ年代を代表するシューゲイザー・バンドだ。ベース&ボーカルを担当しているアレックス・ゲーリングが可愛い。アルバム『Sparkler』がリリースされたのは2009年。今回発表されたリマスター盤はアルバム発売10周年を記念したものだ。

www.youtube.com

動画はアルバムの3曲目「Some Kind of Sad」。リマスター盤にはEARLY DEMOのバージョンも収録されている。

mixiと「Young Adult Friction」

ぴくみんとのつながりはおそらく確実に、2人のアーティストが関係している。具体的な名前は挙げない。勝手に想像してもらえたらよいかと。

ひとりは「党首」と名乗っていた。もうひとりは、ころころと名前とアイコンを変え、足あとを踏むと向こうからマイミク申請してくるという噂があった人だ。その噂をたしかめるために覗いてみたら、ホントに申請がきた。この人とは深夜というより明け方近くに何度かYahoo麻雀をしたことがある。

知らないあいだに上の2人がつくる輪に入っていて、そこで、ぴくみんと知り合った。ぴくみんはTHE NOVEMBERSやThe Smashing Pumpkinsなんかが好きで、2010年にマーク・リンカス(Sparklehorse)が自殺したときは悲しんだ。そんな女の子だった。

その後、mixiが迷走し、大半の人がmixiからTwitterFacebookに移っていった。

ぴくみんの最近のツイートで、高校時代に聴いていた音楽をいくつか挙げている。そのなかにザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハート(The Pains of Being Pure at Heart)があった。2009年にリリースされたセルフタイトルのアルバムだ。

「Young Adult Friction」。アルバムの3曲目に収録されている。いかにもUSインディらしい、甘酸っぱい曲だ。繰り返すサビが耳に残る。「あなたはそれを本物でないと言うんだ」と、そんなサビが繰り返す。

USインディの決して上手くはないテクニックのもどかしさは、まるで青い春の背伸びしたティーンエイジャーみたいで、キラキラとした目の少年少女を見てしまった瞬間みたいな、そんな既視感とよく似ている。

ある年齢を超えた世代から見ると、まぶしいんだよ、とても。とっても。

 

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ぴくみんは、わたしのことを「ぱぴぃ」と呼んでくれる。いま流行りのパパ活じゃないよ。まあ、年齢はそれぐらい離れているような気もするが。ぴくみんとは一度もリアルで会ったことがない。それほど遠い距離に住んでいるわけでもないけれど、ただなんとなく会わないままでいる。

あらためて、ぴくみん!おめ!

Swervedriver、Ringo Deathstarrと来れば、もう、Slowdive(スロウダイヴ)しかないぜ。イングランドが生んだ、ドリーム・ポップ界最高のバンド、Slowdive。もし、2017年に発売された22年ぶりのアルバム、その次がリリースされたら、ぴくみんの愛がいっぱい詰まったライナーノーツを読んでみたいな。

それより、今度、会お。今度がいつになるのかわからないけれど。どこかでスイーツでも食お。お祝いだ。もちろん、ぱぴぃがおごってあげるよ。

 

 

紹介した3枚のアルバムは次の通り。

 

FUTURE RUINS

FUTURE RUINS

  • Vinyl Junkie Recordings
Amazon

 

SPARKLER (REMASTERED)

SPARKLER (REMASTERED)

Amazon

 

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これ、ちょっと前に書いたものなんだけど、まだ、ぴくみんとは会ってない。Twitterでの交流は続いている。

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で、最近のぴくみん。こちらの本に寄稿している。まじ、驚いた。改訂版なんだけど、以前のバージョン持ってるし、何よりもシューゲイザーやドリームポップ好き界隈では超有名な本だからね。

 

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来年、2022年にはぴくみんと会えるかな?